君の世界からわたしが消えても。

 気を取り直して、最近あったことを思い起こす。


「そういえばね、イチがこの前クラスの女子に告白されたんだよ」


 イチは背も高いしガタイもいい。


 顔も整っている方だ。


 でも、いつも口を引き結んでいて口数も少ない。


 そのせいで怖い人に見られがちだ。


 小学生の時も中学生の時も、告白されるのはカナで、イチだってかっこいいのに告白なんてされているのは見たこともなかった。


 そのイチが、最近告白された。


「でもね、断っちゃったんだよ」


 相手の女の子は、わりと評判のいい女の子。


 小柄で可愛くて、少しだけミヅキに雰囲気が似ている子だった。


 そんな子をふっちゃうなんてもったいないよね、と口に出す。


 きっと、これを聞いているミヅキはくすくす笑っていると思う。


< 21 / 298 >

この作品をシェア

pagetop