君の世界からわたしが消えても。

 朝はいつも、ちょっとだけ忙しい。


 ふたり分の朝ご飯を作って身支度をして、早めに起きても時間なんて全然足りない。


「葉月、早く出ないと遅れる」


「もうそんな時間? まずいなあ……、朝一で会議の資料出さなきゃいけないのに」


 壁にかかった時計を見て、急いで歯磨きをしながらそう呟く。


 片手には、まだ最終チェックが途中までしか終わっていない会議資料。


 朝ご飯に用意した、すっかり冷めたトーストとコーヒーを見て、ため息。


 朝食、食べ損ねちゃった。


 学生時代、お母さんはこんなふうに毎朝バタバタしながらも、笑顔でわたしたちを見送っていたのかと思うと本当に尊敬する。


 ――高校を卒業して、大学も卒業して、カナと離れて、もう随分と経っていた。


 高校卒業と同時に上京したから、こっちでの生活は7年くらいになる。


 本当に、早い。
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