君の世界からわたしが消えても。
「ごめんな、せっかく、来てくれたのに。つまらなかっただろ」
30分程度の歩行訓練が終わり、待たせてしまったことを申し訳なさそうな顔で謝るカナ。
わたしはそれに首を振って、安心させるように笑った。
「んー、そんなことなかったよ? なんか珍しいもの置いてあったし、かな……た、が頑張ってるの見て、応援してたし!」
「そっか」
取り繕うように言ったカナの名前。
本人はそれを気にしてないみたいで、わたしの言葉を聞いて嬉しそうに微笑んだ。
帰りは車椅子で病室へと戻る。
補助師がいないし、今のカナはまだ歩いて帰るのはだめみたい。
もう少しちゃんと歩けるようになったら、わたしやイチが手を繋いで誘導したり、壁のところについている手すりに掴まって、病室とリハビリフロアを行き来してもいいらしいんだけど。
……でも、記念すべきリハビリ1日目。
思っていたよりカナは歩けていたし、結構順調なんじゃないのかな。