君の世界からわたしが消えても。

「ごめんな、せっかく、来てくれたのに。つまらなかっただろ」


 30分程度の歩行訓練が終わり、待たせてしまったことを申し訳なさそうな顔で謝るカナ。


 わたしはそれに首を振って、安心させるように笑った。


「んー、そんなことなかったよ? なんか珍しいもの置いてあったし、かな……た、が頑張ってるの見て、応援してたし!」


「そっか」


 取り繕うように言ったカナの名前。


 本人はそれを気にしてないみたいで、わたしの言葉を聞いて嬉しそうに微笑んだ。


 帰りは車椅子で病室へと戻る。


 補助師がいないし、今のカナはまだ歩いて帰るのはだめみたい。


 もう少しちゃんと歩けるようになったら、わたしやイチが手を繋いで誘導したり、壁のところについている手すりに掴まって、病室とリハビリフロアを行き来してもいいらしいんだけど。


 ……でも、記念すべきリハビリ1日目。


 思っていたよりカナは歩けていたし、結構順調なんじゃないのかな。

< 97 / 298 >

この作品をシェア

pagetop