庭師とお姫様 (naturally番外編)
……こんなに早くこの日が来るなんて。



ある程度の覚悟はしていたとはいえ、いざこの時が来ると……不安で足元から崩れ落ちそうだった。



自分ではどうすることも出来ない未来に悲観して、姫の瞳からは涙が溢れ出していく。



人質同然の身で異国に嫁ぐ漠然とした不安……。
姫の悲しみの理由はそこだけではなかった。



細い肩を小さく震わせ、必死に嗚咽を堪えるミリザ姫を、



「……何かあったんですか?」



この数日間で随分聞き慣れた声が呼んで、姫は反射的にそちらを振り返った。



そこに立っていたのは、もちろん庭師の彼で。


思いがけず見てしまった姫の涙にいつもの人懐っこい笑顔はない。



代わりに見たこともない固く真剣な表情で、姫の涙を見つめ続けている。


< 30 / 70 >

この作品をシェア

pagetop