タカラモノ~桜色の片道切符~
「じゃあ。またね」
いつもと変わらない別れの言葉。


「またね」の言葉がこんなにも不確かな約束だなんて知らなくて。



次がないと心の底から理解できたのはランドセルを下ろすぐらいの時だったと思う。



思春期と重なって、子どもを守るための大人の嘘が子どもを傷つける。




そんな感情ばかりがあふれ出していた。



「美桜ちゃん。優くん。いらっしゃい」



「お邪魔します。真理奈さん」



私、春野美桜と彼 仙道航大の関係は言うところの従兄弟だった。


年は私のほうが1つ上。初めて逢ったのは親が言うには彼が生まれたときだそうだ。


記憶があるのは弟が歩き始めた頃、お互い幼稚園に入った頃からだと思う。



彼の家は櫻海線の沿線上にあり1時間に1回ディーゼルの鈍い音が聞こえるのだった


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