タカラモノ~桜色の片道切符~
「今日は何して遊ぶ?」




「お絵かき?」
私と彼と私の弟、まるで3姉弟のようだった。

実際会うのは2週間に1回程度だったと思う。


にもかかわらず親友のような間柄であった。正確にはいつだったか


明確な線引きは出来ていない。


でも恐らくは私がランドセルを背負う頃


彼に対する気持ちの中に弟や他の親戚、男友達とは違う、靄がかかったみたいな言い表せない感情が芽生えたのは。



そしてそのもやもやの正体がわからないまま別れは突然やってきた。


彼が小学校に進学した年、風が冷たくなる季節。


鳴った1本の電話。彼の父親が亡くなったという知らせだった。



雪がチラチラ舞っている、真新しい制服の彼と喪服姿の真里菜さん。



全てが終わった後、少しだけ覚えている、大人たちの争い声。



何を言っているのかわからなかった。




でも、両親を見ていると触れてはいけない気がして、まだ、心の中に靄がかかっている



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