聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~奇跡の詩~
ふと、前にも同じことがあったような気がした。

愛していると、伝えたかったのに、伝えられなかったことが…。

剣が消え、カイの体がゆっくりとくずおれる――。

その時、カイの髪の色が鮮やかな黄金色に変化した。リュティアはそれを、その髪がふうわりと空を舞うのを、世界が真っ白になるような心地でみつめていた。

リュティアはこの時すべてを理解した。

思い出したのだ。

ヴィルトゥスの最後の心の声を…。

“約束する…生まれ変わったら…誰よりも近くで、お前を守ろう…誰よりも近くて、お前をみつめよう…”

心の中で、二人が確かに交わした約束。

約束は、果たされていたのだ。

彼は、誰よりも近くで守っていてくれた。誰よりも近くでみつめていてくれた。

〈光の人〉ヴィルトゥスは、カイだったのだ。

長い…長い旅を終えて、二人はやっと、出会えていた。

出会えていたのに…!!

「い…や……」

リュティアは倒れゆくカイを凝視したまま、後じさり、頭を抱える。

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――っ!!」

リュティアの絶叫が、世界を貫いた。

リュティアの体から、すさまじい力が迸った。

それは“悲しみ”の力。

〈光の人〉が与える最後の最強の力。

悲しみ―――

それこそ、光神がリュリエルとヴィルトゥスの中に見出し、愛した感情。

闇神がリュリエルとヴィルトゥスの中に見出し、惹かれ、怒った感情。

深い愛と共にある感情。深い愛ゆえに生じる感情。

それは今、刃となって、世界中に降り注ぐ―――!

悲しみの刃が世界中の魔月たちを突き刺す。

ライトも―――。
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