聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~奇跡の詩~
フレイアは木箱の上に乗ると、その場で思いきり跳び上がり、城壁にしがみついた。

思ったより高く跳べなかったから、それは必死の様相を呈した。

「ふんぬ~~っふぬぉ~~~~っもうちょっとぉぉぉ~~~っ」

腕力を頼りに、城壁の上へと体を引き上げる。腕力だけは旅の間も鍛えていたのが幸いしてか、しばらくののちフレイアはやっと城壁の上に体を引き上げることができた。

だがこんな堂々とした潜入の場面が、見とがめられないはずがない。

「不審者発見! 不審者発見! こら! 降りなさい!」

すぐに警備の兵たちがわらわらと集まってきた。

「うっひゃあ、ばれた―――!!」

フレイアは慌てて、城壁の向こう、すなわち王宮の敷地内へと身を躍らせた。

そこはどこか見慣れた感じのする場所だった。

鬱蒼とした木々と草花、むせかえるような緑の園。

―植物園だ。

とはわかったものの、どんなに雰囲気が似ていようとここは見知らぬフローテュリア、ヴァルラムの植物園のように道を熟知しているはずもない。だからフレイアは右も左もわからぬままひたすら道をまっすぐに走った。

進行方向でざわついた人の気配がしたかと思うと、すぐに警備の兵たちが姿を現した。

「…いたぞ!! あの女だ!」

フレイアは内心舌を巻いた。

こんなにすぐに追いつくとは、非常によく訓練されていると思ったのだ。

―ウチも見習わなくちゃ!!

フレイアは道を右に折れて走った。
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