誰かのために
3存在価値
『はぁ。』

家の前へくると、ついため息がでる。きっと美姫は、あたしの部屋から勝手に服を借りて新しい彼氏とデートだろう。
ママとパパはきっと今日も遅いはず。
家事をやるのはあたしの仕事だ。

あたしってなんのためにいるんだろう。誰かのために生きているのだろうか。あたしに存在価値なんてあるのだろうか。

そう思いながら鍵をさしこむ。

『ガチャ』

冷たい金属音と共に家の扉が開く。

少し期待していた。誰かがあたしの帰りを待っていてくれるのを。何度、神様にお願いしても叶うことはないのに。

いい加減大人になるべきだ。あたしには、家族の愛なんて無関係なことを理解しなければ。

ねぇ。だれか、あたしをこの孤独という名の部屋の鍵を壊して連れ去ってよ。
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