あたしこそが最愛最高の姫である
「蒼(あお)じゃねーか」
こいつも幹部の蒼。
中世的な顔をしていて、美形だ。
美少年という言葉が似合う。
するとそんな綺麗な顔をした蒼は…俺の顔を見て固まっている。
「……何?」
そう問えば、蒼は珍しいものを見るような目で。
「いや、和矢がすっげー嬉しそうだからビビった」
うわ、表情に出てた?と一瞬焦るものの、蒼は人の表情を見極めることに長けているから仕方ない、と自己完結。
「あれだろ?生徒会のお姫様と最近密会を重ねてんだろ?」
「密会じゃねーよ」
「あれだぞ、実桜が怒ってたぞ?全然和矢があたしの構ってくれないって。明日でも機嫌取りにどっか連れてってやれよ」
実桜ちゃん…怒ってるのか。
めんどくさいな、と思ってしまう。
「明日は無理かな」
「……何、明日何あんの?」
なるべく悟られないようにポーカーフェイスを貫いてみるものの、蒼の鋭く探ってくるような視線には勝てない。
「明日いいことあるんだ?」
ほら、直ぐにばれてしまう。
まぁ誰かにこの嬉しさを伝えたくてここに来たんだから別にいっか。
「明日ね、お姫様とデート」
笑みを隠さずにニッコリと笑って言えば、目の前のヨーロッパ風の美形は大きく目を見開く。
「は?あの生徒会の?」
「もちろん。俺にとって姫って言ったら美玲ちゃんだけだし」
「俺らの姫さん忘れるなって」
今度はスーッと細められる目。
「俺が惚れるのは美玲ちゃんだけ」
「てか今流したけど、名前呼ぶまで発展してんだ」
それにはただ笑顔だけで答えておく。
これ以上は発展できない気もするから。
今の現状で大大満足。
明日のデートとかマジで嬉しすぎて死ねるし。
「ふーん。てか、生徒会たち怒ってない感じ?」
「…は?」
「は、じゃなくて。生徒会会長とか。俺も会長と姫が2人でラブラブしてるとこ見た事あるけどあの溺愛っぶりは煌を余裕でぶち抜いてるぞ」
「………あの煌を?」
蒼の言葉に少し間抜けな声が出てしまった。
「もう手はしっかりと繋いでいるわ、俺が横通るだけで族でも肝冷えるような視線いただくわ。んで姫には俺のことが見えないようにワザと俺と反対方向の道指して気を引こうとしてんの」
あれはたまげたたまげた、なんて言う蒼に更に驚く。
「……それ、過保護超えてるね」
「だから言ったろ?余裕で煌超えて狂ってんだって。そんな奴らばっかの集まりだぜ?生徒会って。和矢はその姫にちょっかい掛けようとしてんだからさ、いつか痛い目くらうぞ。てか今までくらってないことにびっくりだわ」
血の気がサーっと引いていく。
……だよな。
俺、浮かれて気づかなかったけど。
ヤバいやつら敵に回してる感じ?
そして青ざめているであろう俺を見て蒼は面白そうに喉を鳴らす。
「今気づいたのかよ」