ビターな彼氏の甘い誘惑

嶋野さんは興味津々に
目をキラキラさせて「え?だれ?」とか聞いてくるし。

「ひ、みつですぅ・・・」

「ななちゃん。
 愛想笑い一つもしない、彼を笑わすなんて、
 利理さんは、ほんと『勇者』なんだぜ?

 もしくは、魔法使いとか?」

「えー?」
嶋野さんは、まだピンときてないみたい。

って・・・・
そういう 意味の 『勇者』ね。

まったくぅ・・・
でも、たしかに仕事中の彼に話しかけて
にっこり 会話を楽しむって
会社の中じゃあ・・・


呉羽部長の、つめいたい怒鳴り声と、視線を思い出す。

うん。
無理ねぇ。
私も、ご遠慮したい。



「で?
 なにしてるのここで?」


にっこり笑った津川さん。

「あっ。そうだ、津川君っ。
 送ってもらえない??私が、利理さんを怪我させちゃって・・・」
「え??だ、大丈夫??」
津川さんもびっくりしたように私を見る。

私も、びっくりしたように、
津川さんと嶋野さんを見る。





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