ビターな彼氏の甘い誘惑

車を確認した私は、
「はーい。ちょっと
 反対車線なんで、わたりますね?」

と、いって
一度通話を切る。

えっと、「和馬お兄ちゃん。いくね?」
ひらひら、と手を振ると

兄は、にっこり笑って「もしかして、おむかえ?」

なーんて聞いてくる。

ふふ。
そーなんだ。
「いいでしょ?」
「連れ込むなら、連絡しろよ?」
「やだ、お兄ちゃんったら、
 セクハラだよ?」

ばしっと 腕を叩いて、
じゃぁね、と別れる。

よし、車は来ない。


あわてて
小走りで車道を横切って、
見慣れた車の近くへ・・・



「利理。」

「あ、部長。
 外で待っててくれたんですか?」

助手席の扉にもたれるように
部長が立っていた。

また、眉間にしわ寄せてるよ。
仕事帰りだからかな?

疲れてる?


「あの。」
「利理。」

不意に、手を取られて抱き寄せられる。
ちょ、こんな、歩道で。

はずか しい・・・。

すぐに体は 離れたけど、
離れる体温がさみしいなんて思っちゃったのは、内緒。

「利理。」

もう一度
耳元で名前を呼ばれて
顔が赤くなって、もう、目の前の彼しか
考えられなくなったのも、
もちろん、内緒。



あ。
お兄ちゃんにメールしなきゃ。


そんなことを思いながら
助手席に体をうずめたのでした。




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