シナリオ「はりぼて代表取締役」

免責

〇同、通路
   松平と静子が歩いている。
松平「まだまだ先は長いなあ」
静子「あせらんとじっくり仕事頑張ろうな」
松平「そや、それが一番や」
   歩く二人の後ろ姿。

〇マンション、1Fピロティー
   静子、ポストを確認する。
   茶封筒2通が来ている。
静子「裁判所からや」
   静子、茶封筒を手にする。

〇同、408号室、内
   松平が手紙を広げて読んでいる。

松平「(手紙)松平治を平成14年2月15日午後5時破産宣告する。
 これは決定正本である。免責申し立てにより平成14年4月12日
 午前10時民事207号法廷にて審尋を行う。出廷のこと」
   二人顔を見合わせてうなづく。

〇同、夜
   4人食事を終えたところである。
   電話が鳴る。静子がとる。

草津姉「(電話)裁判所からきたで、異議がなければ出廷は不要
 と書いてあるけど?」

静子「そうなんや、異議申し立ててもその人にだけ返済するということ
 でけへんので結局却下されるんや」

草津姉「(電話)そうか、ほなしゃあないな。奈良の義姉とこにも来たらしい」
静子「サラ金もようわかってるから、誰も当日来んそうやて、裁判官が言うとった」

草津姉「(電話)そうか、わかった(ガチャ)」
   静子、受話器を置く。すぐまた電話。
   静子が出て松平に代わる。

松平「黒田材木さん、ご迷惑をかけて本当に申し訳ありません。前の会社の経理責任者やったんで社長も専務も逃げてしもて私が借金全部かぶりまし

た。300万ほどは何とかして返したんですけどあと1300万は
どうにもならんよってにもう破産ですわ。すんません」

黒田「(電話)そうか。たいへんやったんやなあ。うちとかは10万やからもうええで。不景気やからしゃあないわ。弱気になってはあきませんよ。何とか踏ん張って頑張りなはれ」

松平「おおきに。名義変更して店は元のまま営業してますのでご安心ください」
   松平、受話器を置く。
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