TRIGGER!
 風間は真っ直ぐ歩いているが、彩香はどうしてもこの人混みの中を、人間を突っ切って真っ直ぐ歩くなんて出来ない。
 だから、つい避けながら歩いてしまう。
 この駅は、ショッピングモールにも直結している。
 駅と一口に言うが、その敷地面積は広い。
 思わず避けてしまうような、どう見てもリアルな雑踏の中、こんな状況で敵の存在を見分け、更に、ジョージを見つける。
 考えただけでも、気が遠くなる。


「手分け、しようか?」


 せめてジョージの捜索範囲を半分にしたら、少しは効率が良くなるのではないか。
 普通に考えたら、そうなのだが。


「ダメですね」


 速攻で否定された。


「まず彩香さん、あなたを一人で歩かせるのは危険てす。敵の見分けもつかないんですからね。そして例え敵を発見したとして、対処が出来ない」
「なんか・・・トコトンバカにしてねぇか?」


 ひくひくと口元を引きつらせながら、彩香は風間を見た。
 だが風間は前を向いたまま。


「現実ですから」
「へぇ・・・」


 彩香は歩きながらタバコを取り出し、口にくわえた。
 駅の中、東口改札。
 行き交う人々。
 それらは皆、彩香達には目もくれずに過ぎ去っていく。
 だが、彩香はすれ違い様、一人の男の顔を見た。
 黒いキャップを目深に被ってはいるが。
 その男の視線が微かに動く。


「誰が!」


 彩香は男に飛びかかった。


「認識出来ないってぇぇぇ!?」


 飛びかかりざま、男の襟首を掴んで引き倒す。
 途端に、銃声が響いた。
 この男ではない、ほかの場所からの狙撃。
 風間は銃を抜く。


「対処とはね、彩香さん」


 そして構えて。
 風間は引き金を引いた。
 改札の中、柱の影に隠れていた男が倒れる。


「闇雲に相手に飛び掛かるだけじゃないんですよ」


 風間は言いながら、もう一発、発砲し。
 彩香は組み敷いた暴れる男に一発、拳を見舞う。


「じゃあ何だよっ!」


 動かなくなった男を乗り越えて、次のターゲットを狙う。
 今度はあからさまに分かった。
 改札口を乗り越えて3人、こっちに向かってくる。
 風間は再び、狙いを定めて。


「まずは相手の数、位置を把握するのが先です」
「やかましい、結果同じだろうが!」


 この場所に5人。
 全員が私服を着ていたから、微かに目線が合わなければ、雑踏に紛れて見付けられなかった。
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