ラジオドラマ
<ジーク>



「くっ・・・やはり、スラムキングは伊達じゃないか・・・。」


 全力で移動しつつ、ライフルに弾を装填しながら、ジークはぼやいた。


 手榴弾を投げたとき、狙い通り飛び出した海人を見つけ、勝ちを確信した。


 二重トラップ


 簡単には打ち破れない。


 ・・・・・その考えが甘かった。


 向こうは、飛び出したと同時に自分に向けて発砲したのだ。


 ・・・つまり、手榴弾からこちらが近づいていることを悟り、なおかつ、それを逆転の発想につなげた。


 ・・・・・並みの相手では考え付かない発想だ。


 スラムキング。


 乗り越えてきた死線はおそらく自分より上。


 訓練では養えない、生存本能。


 ギリギリの判断は自分の予想をはるかに上回る。


 突如飛び出した銃弾により自分のライフルは簡単に狙いを外された。


 そう・・・狙撃主の自分が狙いを外されたのだ。


「まったく・・・なんで、あんなヤツが民間人なんだ?」


 ジークは弾を装填し、新たな足場を見つけ、そんなコトをぼやいた。


 あいつが軍人になれば、確実に功績を挙げて、あっという間に俺よりも上に行くだろうに・・・。

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