真夜中プリズム

「それで、あれが、北極星」


最初に見ていた方角と、真反対を見る向きに立ち。真夏くんはぴんと、人差し指を空へ伸ばした。

夜空の真ん中。

ぽつりと光る星がひとつ。ああ、あれが、って。

なんでそれだけわかったのかはわからないけど、真夏くんが見つけたものと同じ星を、ようやくあたしも見つけていた。

北極星。ポラリス。みんなの、誰かの、目印になる星。


「昴センパイ、おれね、星になりたいんだよ」


空を指差していた手が、ゆっくりと開いた。まっさらな手のひらは、あの光の粒に触れようとするみたいに満天へ向かう。


「たくさんの人には気づかれなくても、その他のたくさんの光とおんなじでもいいから。誰かたったひとりにでも見つけてもらえたらそれでいい」


真夏くんが、手のひらをぎゅっと握り締めたら。そこに浮かんでいた星を、まるで掴んだみたいだった。

一番の綺羅星の、その隣で。とても小さく光っていた六等星。


「……でも、星になんてなれないよ」

「わかってる。だから、代わりに自分だけの星を見つけたいんだよ。他の人は知らない、自分だけの光。おれだけが知ってるたったひとつの目印。まだ、見つけられないけど、これだけ果てのない宇宙だもん、絶対にあると思うんだ」


真夏くんが掴んだ先の、名前の知らない小さな星。

ほんのかすかなその光は、だけど確かに光を放ってここにいるあたしのところまで届けてくれる。

ここにいるんだって、必死で歌っているみたいに。

自分の場所を示すように。

遠くから、遠くへ。

立ち上がろうとする人の手を掴みに向かう、それは、とても、大切な光。
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