I love you に代わる言葉
12話 天使の奏~テンシ ノ カナデ~
 夏休みに入った。
 ボク等の学校は、(バカ校だからか)他校に比べて夏休みが長い。といっても、その差は数日程度のものだが。
 夏休みに入った最初の土日、ボクと今井は、シンの家に遊びに行った。バイトをしているシンは、土日が休みらしい。という事は、シンの職場はサービス業ではないんだろうと予想した。
 夏休み前に一度、そして土曜、日曜。計三度シンの家に行った事になるが、おねーさんは三度とも仕事で昼間は家に居なかった。おねーさんが帰宅したのは、いつも十七時半頃。早番の時は、九時から十七時までが勤務時間だとシンは言っていた。
 三度シンの家へ行って、ボクはとある点に気付いた。おねーさんはどの日も、仕事が終われば真っ直ぐ帰宅した、という点に。だから、
「おねーさんってさ、彼氏いないの? 何かいつも予定無さそうだけど」
 そう、シンに尋ねたんだ。今思えばかなり失礼な事を口にしたな、と思う。
 ボクには、居ないように見えた。たった三度真っ直ぐ帰宅したくらいでそんな考え早計過ぎるけど、何となく、ね。土日なのに何処かへ行く様子はない。仕事後じゃ面倒なのかも知れないけど。何より、男っ気が皆無なんだ。
 此処でシンが「いない」と言えば、シンが言った「救える」という意味が絞られるだろう。
 シンは真面目くさった顔をして一言、
「それは自分で確かめた方がいい」
 そう言った。
 ボクは不思議でならなかった。何故、言わないのか。一番肝心な事を何故、言えないのか。
 今井と目が合う。今井も不思議そうにしていた。
「確かめるのは日生だ。今井が聞いても意味がねぇからな。聞く機会があれば、日生が直接聞け。――いいな?」



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