I love you に代わる言葉
07話 恋心の醒~コイゴコロ ノ メザメ~
 翌日登校して、下駄箱はもう目前という所で不意に顔を上げると、仁王立ちしている今井が映った。
 忙しなく目だけを動かし多くの生徒に不審な目で見られているが、そんな事を気にする様子もなく、鋭い目付きで誰かを待っている、若しくは探している、そんな姿だった。
 実際はどうか知らないが、生徒指導員でもないのにあんな目立つ場所で事を成そうとするなんてバカじゃないのか。
 朝の無駄に爽やかな日の光が、今井の金髪を照らして無駄に煌かせている。それが顔に不釣合いで鼻で笑った。
 今井から視線を逸らしスタスタと真っ直ぐ下駄箱を目指せば、ボクが居る事に気付いた今井は、ボクの元へ走り寄ってきた。
「日生!」
 名を呼ばれ反射的に立ち止まる。
 今井は嬉しそうに言った。
「お前を待ってたんだよ」
 最悪だ。こいつが多くの生徒に注目を浴びながらも根気良く待っていた人物はボクだったらしい。
 ふんっ、こいつの事だからきっと面倒だ。それに昨日の事もある。
 そう思い目も合わさず無視して歩けば、今井は「お、おい! 待てよ!」と言って、慌ててボクの後を追ってくる。
 下駄箱で上履きを取り出し外靴をそこへ仕舞う。数秒遅れて今井もボクの横で慌てて同じ行動を取るが、その動作はボクより僅かに遅かった。だから今井を待つ事も無くさっさと下駄箱を離れれば、背後からまたも「待てよ!」と声が掛かった。
 尚も無視を続けると、
「今日こそは一緒に煌宝へ行こうぜ!」
 と言ってきた。
 煌宝、という単語を出せばボクが反応して立ち止まると思ったのか。……立ち止まったけど。
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