愛してもいいですか



「お……おはよう、」

「今日のスケジュール、机に置いてあります。午後の会議は十三時からの予定だったのが十四時からになりました」

「え、えぇ……」



あ……あれ?

予想とは裏腹に、いつもと全く変わらぬ様子で挨拶をする日向に驚き拍子抜けしてしまう。



なんか、なんていうか……普通?

そこまでケロっとした顔をされると、緊張していたこちらがバカみたいというか……考えすぎだった?



「俺はこれから秘書課のほうで会議がありますので。何かありましたら携帯にかけるか直接いらしてください」



そしてそう書類を手に、日向は部屋を後にした。バタン、と閉じられたドアに、一人きりになった広い室内で「はぁぁ〜……」と空気が抜けたように息を吐き出す。



私ひとりの、気にしすぎかぁ……。

考えてみればそうよね。神永みたいな真面目な人間だったら、本気で考えて悩んで気にしたりするんだろう。けど相手はあの日向。女に抱きつかれることくらい日常的といってもおかしくないだろうし、『珍しいなぁ、でもラッキー』くらいにしか思ってないかもしれない。

そう思うと、少し気は軽くなってきた気がする。



……けどそれは同時に、私が触れたことすらもさほど気にもされていないということ。

それはそれでまた、心にチクリと棘が刺さる。



って、なんなの私!日向が気にしてないならそれでいいじゃんか!

そうよね、そう。日向には、なんてことないこと。



自分に言い聞かせるようにして、仕事を始めようと日向が机に置いておいた書類をパラパラとめくり一度簡単に目を通す。


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