愛してもいいですか



「えぇ、誰とははっきり聞いてないけど……あんな言い方されたら誰だって分かるわよね」

「そう、ですよね。なら尚更どうして日向を……」

「だから、よ。日向も西さんも両思いなら、私は邪魔なだけじゃない」

「……ん?」



ところが、それまで真面目な顔をしていた神永は私の発言にキョトンとした顔を見せる。



「西、さん?」

「え?えぇ……営業部の西さん、でしょ?日向の好きな人」

「あー……」



そして少し考えると、何かに納得したように頷いた。

なにに納得しているのか、よくわからないけど……。腑に落ちないながらも話を続ける。



「その西さんも日向のことが好きみたいでね、言われたの。『日向くんを縛らないで』って」



思い出す、彼女の言葉。



『あなたは、社長という立場で彼を縛っているだけなんじゃないですか?』



あんなに近くにいたのに、日向の気持ちもこうしてようやく気付くなんて。



「私はなにも分かってなかった。西さんの気持ちも……日向の、気持ちも」

「……だから日向を営業部に戻した、というわけですか」



神永の言葉に頷き一口お茶を飲むと、ふと思う。そういえば神永はどうして今日、うちの会社に来ていたんだろう。



「そういえば神永はどうして会社に?」

「あ……はい、英三社長からの遣いで。あまり気乗りはしなかったんですが、そういうわけでしたらいいきっかけになればいいと思うのでお渡しします」

「え?」



すると神永は自分の横に置いてあった茶色い皮のビジネスバッグから、一冊の大きめな本のようなものを取り出す。そっと開かれたそこには、スーツ姿の男性の写真が貼ってあった。

これはつまり……お見合い写真?


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