愛してもいいですか
「それでは、会議のほうを再開します」
戻ってきた会議室で発した日向の言葉に、休憩中に少し軽くなった空気はまた重くなる。
「先程の続きで、何か意見のある人は挙手をして……」
そこまで言いかけて、思い出すのは先程の日向の言葉。
『怖い顔してる人には、余計緊張するだけですよ』
……笑顔、笑顔、か。
意識して口の端を上げ、目一杯ぎこちない笑顔を作った。
「きょ、挙手をして、発言をお願いします……」
にこりというよりかは、ニヤリとしているかもしれない。目は笑っているだろうか、口角は上げすぎじゃないだろうか、意識しすぎてピクピクとする顔面の筋肉から、相当下手くそな笑顔をしているのだろうと自分でも感じる。
こちらを見る社員たちは、どうしたのか、突っ込むべきか、笑っていいのか……と皆複雑な顔をしている。
こ、これ……安心感出てる?怖くない?余計変な緊張感が出てる気がするんだけど……。
「ブフッ」
瞬間、静かな室内に響いたのは小さな吹き笑い。それは隣に座る日向から発せられたもので、日向は私の方を見て口元を押さえ、必死に笑いをこらえるように肩を震わせている。