愛してもいいですか
「今日社長来てるんだって?」
「あぁ、見た見た。相変わらず美人だけど、性格キツそうだよなぁ」
『美人』のあとに続いた『キツそう』の言葉。彼らは下でその本人が聞いているとも気付かず、あははと笑った。
「……私、そんなにキツそうな顔してる?」
「あはは。それ、聞きます?」
ぼそぼそと日向と会話を交わしていると、また上の階での会話は続く。
「けどさぁ、何様のつもりだよ。偉そうにしやがって」
「どうせ現場で汗水たらす俺らのことバカにでもしに来たんだろ。いいよなー、社長様は毎日ラクで」
けれどその言葉は、出来ればあまり聞きたくない、偏見に満ちた言葉。
偉そうになんて、していない。バカにしにきたわけがない。ただ自分の目で現場を見て、みんなと感覚を共有したいだけ。
その気持ちを抱いているのに、伝わらない。そのこと一つが、ズキ、と心を痛くさせる。
「あんな傲慢そうな社長相手に、秘書もよく務められるよなぁ」
「笑ってはいるけど、内心嫌でしょうがないんじゃねーの」
ほらまた。ズキッ、て。黄色いヘルメットを持つ手に、ついグッと力が込められる。
何も言えず俯く私に、隣の日向はどんな顔をしているかは見えない。こんな時も、笑っているかな。本心を言い当てられて、気まずい顔をしていたらどうしよう。そう思うと、余計に顔は上げられない。