愛してもいいですか
……そんなに顔色真っ青にしなくても、少しくらいの契約条件の変更なら構わないのに。
それとも私は、それすらも簡単には許さなそうに見える?
ちら、と顔を見上げ、俯く彼の背後にある戸棚のガラスに映った自分の顔を見る。するとそこには、真剣に話を聞こうとするあまり眉間にシワを寄せみるからに険しい顔をした自分の姿が映っていた。
……これじゃあ、緊張もするよね。
不意に思い出すのは、以前日向に言われた一言。
『笑ってくれる人相手だと、安心しますよね』
笑顔、笑顔……。この前は意識しすぎて上手くいかなかったけれど。力を抜いて、大丈夫、安心して話しましょう、そう伝えたいから。
「……ではまず、現在の取引条件と変更後の条件を教えていただけます?」
「え……?」
「細かいところまで話をして、お互いの譲歩出来る点を見つけましょう」
笑みを浮かべ言った私に、顔を上げた彼は少し驚いた顔をしてみせる。そして安心したように、徐々に表情を柔らかくした。
「……はい、ではこちらの資料がー……」
今までの自分だったらきっと、厳しい顔で場の空気を重くするだけだった。
だけど、表情ひとつで相手の受け取り方も変わることをその言葉が教えてくれたから。素直にそれを、受け止めようと思う。