変愛
中川家からの電話だから、もこみちは必ず電話に出るだろうと思った。
ふと、私はあのカラオケに来ていた後輩の言葉を思い出した。
二人の仲には割り込めない…。

私は、もこみちの腕を掴んだ…。

「…ちゃん…」

もこみちが私を見下ろしながら、携帯を握り締めていた。
私の言葉と中川家の携帯の呼び出し音に、もこみちは翻弄されていた…。もこみちは出なかった。携帯の着信音が止まるとメールの着信音がなった。
もこみちがメールを開いた。
「…ちゃん。
ごめん…
今日は帰る…
あ、あいつ高熱みたいだし」
もこみちの言葉に
私は笑顔で手を振った。
もこみちの背中を見送りながら、私は
溜め息混じりに呟いた…。
中川家に負けた…。
そう思いながら、断わられてホッとした自分がいた…。
そして、反省した。
人を試そうとした事に…。
絶対やってはいけない事だった。
だから、私が悪い。もこみちに、袖にされた形だったが、心底、これで良かったんだと思っていた。
やっぱり、私でも高熱の友達を選ぶ…
それが正解だと思っていたからだ。
子供だった私には
そんな思考回路しかなかった。
だから数日後に起こる波乱が予知出来なかった。
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