ふぉーる いん らぶ
 誰が始めに言ったのか。
 それは定かではない。
 が、しかし、それは素晴らしいくらい的を得ていて。
 そう、まさに読んで字のごとく・・・。











 朝7時5分発の出勤電車。
満員電車に揉まれる今日この頃。

 上京してきてはや5年。今年で俺も27になる。特に趣味もなく彼女もいない寂しい20代を過ごしている。

(朝っぱらからこんなブルーな気分で1日やっていけんのか・・・)

はぁ、と小さくため息をこぼした。


 彼女は2年程前からいない。というか作らないようにしている。
 今まで女に困ったことは一度もない。自分でいうのもなんだが割と顔はいい方で、言い寄ってくる子は沢山いた。俺はその中から選んでいただけ。
 だから実を言うとこの歳になってもいまだに本気の恋とやらをした事がない。もちろん付き合っている時に「好き」だの「愛してる」だのは言ったことはあるが、一度だってそう思ったことはない。

 前に付き合っていた女の子に言われた最後の言葉は確か、
 「あなたって可哀想な人ね。きっとこのまま誰も好きにならずに生きてくのよ。」


 言われた時こそ腹が立ったが今思うと確かにそうだと納得が出来る。
「はぁ・・・恋か。」
20代後半にしてなんて悩みなんだと人目もはばからず頭を抱える。








 そうこうしているうちに電車は目的の駅につき皆立ち上がる準備をしていた。自分も立ち上がらなければと前のめりになったとき、あらかじめ出しておいた定期がボスっと目の前に落ちた。
 あっ、と思った時にはすでに自分のものとは違う手が定期を掴んでいた。

 「落としましたよ?」














 落ちた。
 定期ではない。俺が。この子に。

 見た目は17、18ぐらいだろうか。制服を着ているところからして高校生だろう。
 しかし、今の俺に年齢などは関係ない。

「・・・あの、駅着くんですけど。あたし降りなきゃいけなくて。いいですか?」
「ダメです。」
「・・・え?」

 俺の言っていることが理解できなかったらしくはぁ?みたいな顔してる。その顔も可愛いなおい。
 彼女の気持ちは良く分かる。だが、引けない。


 何故なら、もう落ちてしまっているから。








[ふぉーる いん らぶ]





恋はするものじゃない。
落ちるもの。

落ちたからには容赦しない。
必ず君も落として見せる。
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