鎮魂歌―神に愛されし者―
1. 解放されし力
「裕月(ゆつき)様、朝でございますよ~、起きてくださいませ~」
聞こえてくる、朝を告げる優しい声に
「ふぁ……もう朝?」
まだ眠りたいという欲求と闘いながらも返事をする。
「そうでございますよ。すでに瑠海(るか)様は支度を終えて裕月様をお待ちになっておられます。」

ちなみに瑠海というのは私の兄である。

「え…急いで支度しないとっ!」
眠気なんて吹き飛んで、慌てて支度をし始める私を見て、従女の朱里(あかり)は微笑むのだった。

「朱里っ、今日は転校初日だよぉ~、きっと皆すごい綺麗なんだろうなー。私なんて不細工だから絶対に浮いちゃうよ。変な目で見られたり笑われたりしたらどうしよう。」
震えて語る私に、
「(裕月様は誰もが認め、一目置くほどの絶世の美少女ですのに…無自覚というのはタチが悪いものですわ)…私は裕月様が狼に襲われてしまわないか心配です。少しでも怪しいと感じたらすぐにでも離れてくださいよ!…というか、逃げてくださいね!?」
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