Candy House
「はい、できた」

さくらさんが言った。

本当に30分で終わっちゃった…。

鏡には、昨日選んだ黒地に撫子の花柄の浴衣を着ているあたしがいた。

さくらさんの手によってキレイにアレンジされたヘアースタイルを飾っているのは、昨日の彼女があたしに見せたかんざしである。

「すごいですね…」

浴衣の着つけだけでもすごいのに、ヘアアレンジもできるなんて…。

驚きのあまり固まっているあたしに、
「時間、大丈夫?」

さくらさんが言った。

「えっ…ああ、そうだった」

上野さんと安部さんを待たせていることを思い出した。

「えっと…ありがとうございました」

頭を下げたあたしに、
「お祭り楽しんできてね」

さくらさんが笑いながら言った。
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