手をのばす
ベッドの中で、沢渡は私の頭を抱き寄せた。

「江崎さんとこうしてるなんて、不思議だな」

「そうね」

私は鼻先を彼の胸に押し付けた。



沢渡と体を重ねるようになってから、心の距離までぐんと近づいた気がする。

それはこれまで一度も感じたことのない近しさ。

とうてい女友達とは持つことのできないもの。



高校のとき、あんなに遠い存在だった。

偶然再会して、やっと仲良くなって。

メールを続けて。

そんな日々をどれだけ重ねても、今の沢渡との距離は手に入らない。



裸で抱き合わなければ、分からないこともいっぱいあるんだ。


どうしよう。幸福で倒れそう。



このときの私は、沢渡との関係に無我夢中だった。
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