手をのばす
彼女たちは、私がここにいることに気づいていないらしい。

息をひそめて私はロッカーのドアの影に隠れていた。


「あ、それね同じ部署の営業のヤツもいってた!夜残業してたら、部長と江崎さんがフロアでこそこそ話してたの見たんだって。ナンかワケありっぽかったみたいよ」


「へえー、じゃあもしかするかもね」


・・・・・・確かに残業していて、部長に声をかけられたことはあった。

それでコーヒーをくれて、でもそれだけだ。


それが、何でわけありっぽいなんて思われるんだろう。


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