手をのばす
「でも部長の立場でばれたらまずくないの?」


「そりゃそうでしょ。上の方の人って出世がかかってるし、競争も激しいんだろうからこんな話があると心証悪いかもね」


「地方に飛ばされたりとか?」

「あるかもねー」


「今佐々木部長と取締役ってけっこう対立してるらしいって秘書課の子も言ってたし、もし本当に不倫があったとしたら、どうなるんだろね」


始業開始5分前を知らせるチャイムが鳴った。

彼女たちは話を中断して、慌てて更衣室を出て行った。


部長と私が不倫なんて、そんなわけないじゃない。

噂なんて本当にいい加減なものだ。


ロッカーを乱暴に閉めた。
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