手をのばす
私の部屋で、二人では食べきれないような量の鍋が完成した。

沙耶が私の分も取り分けてくれて、

「おーいしい!」

二人でそう言い合った。

部屋にあたたかい空気といいにおいがいっぱいになる。

「これもおいしいよ」

沙耶の分のサラダを差し出した。


二人でよく食べて、よく飲んだ。


なんてことのない話をして、テレビに向かって悪態をついたりした。


そうしているうちに、どんどん空の缶チューハイが増えてゆく。


それを見た沙耶は

「今日はいっぱい飲んだねえ」

目をとろんとさせていた。

「まだあるよ。あ、ワインあけようか」

私はいそいそと冷蔵庫からワインを取り出してきた。




注がれた赤い液体は、グラスでゆらゆらと揺れている。
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