手をのばす
夕方になり、ひととおり買い物を終えた。


デパートを出てから、

「ねえ、今日は夜私の部屋で飲まない?また料理作って」

と沙耶を誘った。

「いいね!そうしよ。何作ろうかー」

「また鍋にする?簡単だしおいしいし」

「いいねー!」

手をたたいて沙耶ははしゃいだ表情を見せた。


二人でスーパーで材料とお酒を買いこんだ。


店を出ると、夕闇があたりに忍び寄っている。

闇の迫る速度が速すぎて、目が順応できていない。

風景の輪郭がゆがんで見える。



それはきっと、私自身の心象風景そのものだったかもしれない。
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