手をのばす
ふっとため息をついて、沙耶は佐々木部長に近づいた。

「申し訳ありません。少し席をはずしてもよろしいでしょうか?」

沙耶の落ち着いた対応に驚いた様子を見せてはいたものの、
「わかった」
と部長は短く答えた。


「それではこちらへ」
沙耶は振り返り、奥さんを促した。


ふん、と小さくつぶやき、奥さんはそれにしたがった。

二人が出て行くと、
「なに?」
「どういうこと?」

フロアのあちこちからそんなささやきが飛び交った。



やっぱり、そうだったんだ。

沙耶のメールの相手は、佐々木部長だったんだ。



私はその場にへたりこんだ。


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