手をのばす
そうして前向きになっても、どうしても脳裏に悪い想像がべったりはりついたままで、

ふとした瞬間聞こえてくる。



「気持ち悪い」



私はまた、立ち尽くしそうになる。

それでも期待は、消えない。

私が話しかけたら、沙耶はどんな反応をするだろうか。

ほっと息を吐いて、笑顔を向けてくれるだろうか。


それとも、


「アナタと一緒にしないで」


と顔を背けるだろうか。


それとも・・・・・・。


私はまだ話したこともない、幾通りもの沙耶を思い浮かべ、祈るように過ごしていた。
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