手をのばす
あたたかいキモチ
何週間もかけて作ったぶ厚い決算書を抱え、私は上司のデスクへ近づいた。


「できました。ご確認お願いします」


パソコンの画面から目を離し、佐々木部長は決算書を受け取った。

思ったよりも重かったのか、一度片手で持ったものの両手で持ち直してから机の上に置いた。

パラパラとページをめくっている。



そうしていると私が部長の頭を見下ろす形になって、だいぶ薄くなった後頭部が丸見えになった。

反射的に、見てしまった罪悪感を感じ、そこから目をそらした。


しばらくして部長は

「残業続きで悪かったね。ご苦労さま」

と笑顔を向けた。



これまでほとんど部長とは話をしたことがなかったけれど、まさかこんな風にねぎらってくれるとは思っていなかったので驚いた。


「ありがとうございます。失礼します」


私は深く頭を下げて、自分のデスクへ戻った。

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