【短編】失恋した次の瞬間には壁ドンされてました。
なにより、目が綺麗だった。行動や発言はともかくとして、目にどきりとするとはなんだろう。
瑞希は考える。
この目なら泣けたのだろうか、と。

「薫って呼んで」

そんな風に人を評価する罪悪感か、その目に見つめられたせいか。その提案にゆっくりと頷いてしまった。

「かおる、くん」

呼べば、非常に嬉しそうな顔をしてくれる。そのくしゃっとした笑顔にすら、またどきりとした。
早くなる鼓動を悟られるわけにはいかない。

「隙あり!」
「あっ」

彼女は相原の手から筆箱を奪い取ると、すぐさま教室へ戻った。

残された相原はと言うと、楽しそうに鼻歌を歌いながらゆっくりと自分の教室に戻るくらいに余裕をかましていた。


×


そこから数日間は、なんらかの形で1日1回は相原が瑞希につっかかってきた。
忘れた教科書が机に置いてあり、もちろん背中には相原の名前で、中に「慌てんぼさんめ」と書かれていたことがあった。その文の内容にも寒気がしたし、なにより自分の机に奴が近づいたのかと、瑞希は胃が痛くなった。

だがしかし、助かっていることも事実なので悪いことは言えない。
だが、ここまでされると遠慮も覚える。
なので瑞希は、ある行動に出たのであった。
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