杉浦くんの手と私の手。
私はあやちゃんの手から逃れるように後ずさる。


そして玄関とは逆の方向にまた走り出す。


このまま無事に家に帰れそうにない。


ならもう屋上しかない。


とりあえず、逃げたい。


隠れたい。


人のいないところに。


誰にも見られないところに。


私はさっきよりも強く右手をこする。


屋上まで通じる階段を私は一気に駆け上がる。


屋上に出ると夏の生暖かい風が吹き抜けていた。


私は数歩前に出てその場に崩れ落ちた。


そして空を見上げる。
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