杉浦くんの手と私の手。
誰もいない。


それがどれだけ心地良いことか。


前の街でも、よく屋上から空を見上げた。


屋上しか心の休まる場所が無かったから。


この町に来て1度も屋上に来ることは無かったのに。


これから先も屋上に来る気は無かったのに。


やっぱりダメだった。


どこに逃げても私は私。


汚いままだ。


どんなに拭っても切り取っても、どうにもならない汚さ。


いっそここから飛び降りて、何もかも無くしてしまいたい。


そしたらきっと今よりずっと楽だろう。
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