杉浦くんの手と私の手。
なっちゃんもあやちゃんも、びっくりしただろうな。


杉浦くんもきっと。


気味が悪かっただろうな。


「キヨ」


私を何度も助けてくれた人の声。


私は顔だけ後ろに向けた。


杉浦くんはそこにいた。


すぐ後ろに。


杉浦くんは笑って言う。


「ほら、帰ろ」


そう言って私に手を伸ばした。


私はその手から逃れようと立ち上がって後ずさり言った。


「来ないで。触らないで。あっちに行ってぇ!!」


最後は声が震えた。


触らないで欲しい。


来ないで欲しい。


見ないで欲しい。


こんな汚い私なんか。


杉浦くんはそれでも私に手を伸ばしたまま、近づいてくる。


そしてとうとう私の両手を掴んで私の目を見つめて言った。


「ほら大丈夫。そんなに怖がんなくていいから」


『大丈夫だから。逃げなくていい』


杉浦くんの声が同時に響いた。


あたたかい手。


優しい目。


私の両方の目から涙が溢れた。


心配しないで欲しい。哀れな目で見ないで欲しい。


もっと自分が惨めになるから。
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