*悪役オムニバス*【短編集】
嶺子はとぼとぼと重い足取りで、荒屋の中へと踏み入る。
開かれたままの障子窓から中を覗くと、畳にひとつの座布団が敷かれただけの、小さな和室があった。
嶺子はそこにあがり、障子窓を閉めた。
荒屋の中は蜘蛛の巣だらけで、角には小さな蛇まで這っている。
そこかしこに穴の空いた部屋は不気味だ。
この和室の壁の向こうにある部屋から、なにかがこちらを覗き込んでいるような……。
しかし嶺子は、そこに抵抗なく腰を掛ける。
(ここにいよう)
嶺子は、悲しく泣く腹を押さえながら、その場に座り込んだ。
山なりに折った膝の間に顔を埋め、息を潜める。
こうしてじっとしていると、冬の寒さが身に沁みる。