一生に二度の初恋を『あなたへ』


わたしの家に『佐藤 春』という人はいないのに、今年の春から毎月送られてくる。


差出人不明の謎の手紙。


思い当たる節があるとすれば離婚したお父さんの名前が『佐藤』。


だけど前、お母さんに『お父さんの親戚とかに佐藤 春って人いるか知ってる?』って聞いたら『いないよ』って言ってた。

お母さんがいないってはっきりと言うのなら多分本当にいないのだと思う。



それからは見えない相手に何だか怖くて、来る度にゴミ箱に捨てようか迷った手紙だけれど。

わたしのちょっとした出来心で、中身を見てしまったときから大事に机の奥にしまってある。



だって手紙には、熱い言葉が綴られていたんだもん。


最近あったことや季節の変化、そして……。



『もう一度だけでいい、春。お前に逢いたい……好きだ』




見た瞬間に胸がくすぐられた。


顔が熱くなり、その言葉からすごく『好き』が伝わって来てきゃーっと叫びたくなった。

だってラブレターだよ!?


そんなもの現実に見たことないわたしにとってはもう興奮しかない。

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