一生に二度の初恋を『あなたへ』

・もう少しだけ



「気をつけ。礼」「ありがとうございました‼︎」


わたしはそのはつらつとした声を聞いてシャーペンを動かしていた手を止める。

野球部とサッカー部と陸上部。三つの部活の中で唯一女の子がいる部活だから、陸上部の挨拶は声で分かる。



外を眺めると曇りだからかな、水に溶かしていない濃い絵の具のような青の空と、誰だか分からない人。

もし晴れていたとしてもここ数日間は日が一気に短くなった気がするから、どちらにしろ見えなかったと思うけど。


斎藤くんを探すのは諦めて、教室の時計を見ると針は六時過ぎをさしていた。



斎藤くんと、過ごせる時間。

明後日まで。


それまではわたしが斎藤くんの部活が終わるまで教室で待って、一緒に帰ることになった。



付き合って変わったことがあるかと言われるとよく分からない。


そういうの初めてだし…。

カップルたちがよくするデートでさえ、わたしたちには時間が残されていないから。



でも。少しでも長くいたいよ。

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