一生に二度の初恋を『あなたへ』
・突然のタイムリミット
いつもの見慣れた駅に着くと、傘はゆっくりと閉じて。
色が剥げている自動販売機と錆びれた券売機しかない小さな待合室の木のベンチに座った。
「家まで送る」
「え、そんな。申し訳ないしいいよ」
「駄目?」
「駄目ではないけど……」
踏切の音が鳴って下ろしていた鞄を肩にかけると、斎藤くんも同じように鞄を持った。
暗闇の中で交互に光る赤いランプがわたしたちを照らしている。
「じゃあ送る」
斎藤くんはわたしの目を真っ直ぐ見た。
斎藤くんの家は学校から歩いていける範囲だから面倒なはずだけど、でもわたしの目を真っ直ぐ見て断言したときの斎藤くんは何を言っても聞かないこと、知ってる。
……『送る』そう言ったはものの、斎藤くんは電車に乗って揺られるとものの二、三分で寝てしまった。
疲れてるなぁ。
引越しの片付けとか、お母さんのこととか、斎藤くんにとって大変なことは沢山ある。
だけど。無理して斎藤くんは笑う。