一生に二度の初恋を『あなたへ』


あ…こういう雰囲気ちょっと苦手……ムズムズする。


誰もいないって思うと、自分がやらなければいけないんじゃないかっていう気持ちがいつも疼く。


かといって質問したいことがあるわけでもないし……と思っていると、どこからか「先生彼女いますかー」という声が聞こえてきた。


ほっ…良かった。



「残念だったな。最近そういうのは作ってない」



――それなりにかっこいいしモテそうなのにな、先生。

『一生独身なんてもったいない』なんて声も聞こえるほど。


彼女とか結婚とか興味ないのかな?あ、でもよくいるよね。生徒と学校が彼女とか言ってる先生。


先生もそんな感じなのかな。


もう聞き慣れた質問のように先生は受け流した。



「あ、転校生紹介忘れてた。クラス変えで知らないやつばっかだから、分かんないと思うけど。

はい、立ってー」



みんなが騒つく中、椅子を引いて立ち上がったのはわたしの隣の席の人だった。


隣の人…転校生だったんだ。



「斎藤 尚(サイトウ ナオ)です。よろしくお願いします」



そう言うと爽やかな笑顔で頭を軽く下げて席に座った。

その瞬間。わたしの方をじっと見られたような気がするけど……まぁ多分わたしの気のせいだ。

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