一生に二度の初恋を『あなたへ』


最低一回走ればもう走らなくていいし、わたしもあの中に入りたいんだけど…。


さっきからわたしが出しているあからさまな嘆きの声は、疲れたアピールをするためだし。



「優、わたし、負けないから!!」

「大丈夫……。わたしが勝つことは一生ないよ」



そんな心からの苦痛の叫びが聞こえているのかいないのか、現役陸上部の結愛ちゃんは何故か大して足も速くないわたしに闘志を燃やしている。



「位置について。よーい、ドン!!」


わたしと結愛ちゃんは先生の掛け声で走り出した。スタートダッシュからもう勝負はついている。


それでもここで手を抜くと後から結愛ちゃんに怒られるのが目に見えてるから、何とか必死に足と腕を動かす。


でもさすがに四回目はキツいでしょ……。



汗でなのかわたしが意識朦朧としてるからなのか、ゴールの線が歪んで見えた。



結愛ちゃんの誘いを断って止めとけばよかったかな――。


あっでももうちょっとでゴール。

ほら、こういうのって精神力だってよく言うし。

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