天才さんと電脳少女
「神崎さん、帰ろうよ」


あれから毎日、桜ノ宮君は僕に声をかけてくれた
最近では一緒に帰ったりするのが日常化してきている


「ほら、はーやく」


「あ、うん…」


かれこれ一ヶ月近く共に過ごしてきて分かったことは、桜ノ宮君はどんなときでも笑っている

クラスでの賭け事に負けたときも、先生に嫌なことを押し付けられたときも、理不尽なクラスメイトに怒鳴られたときも
どんなに嫌なことがあっても笑っていた


「そうそう、この間テレビでさぁ」


桜ノ宮 綾…彼は有名な桜ノ宮財閥の御曹司で、将来を約束されている
けど、それと同時に全てにおいて完璧を義務付けられている

有意義で約束された未来と、学生時代の自由
どちらの方に価値があるのだろうか…
でも、結局僕には答えは出せない
出せるわけがない
僕はその選択を迫られたことがないのだから

「それで、その司会者がね」

「…桜ノ宮君は、さ」

彼の話を遮り、声をかける
彼は気にしていないようでいつもの笑顔で「なに?」と首をかしげる

「…あの、僕には分からないけど…ずっと笑ってるのって疲れない…?」

人見知りで人を妬んでばかりだった僕には、どんなときでも笑っているなんて言う芸当なんて出来はしない
出来るわけがない
でも彼は…彼はずっと笑顔で…
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