カンナの花



「明日は帰ってらっしゃるんですか?」

「ん? 明日は当直だ、帰れねっから、夕飯いらないぞ。」


つかさとなぎさが食卓を去ってからの両親の会話に、姉妹は興味津々だった。
つかさの部屋で、戸を少しだけ開けて感づかれないように耳を澄ます。


「仕事場って誰の?」

「…。」


一瞬父親は黙った。


「何言ってんけお母さん、オレんだべな。」


洗い物をする母の手が止まった。水だけが流れている。


「事務所じゃなくて?」

「事務所って、なんだ?」


父の声が震えていた。母は水を止めて、とどめをさした。


「会計事務所。城前町の。」


階下の沈黙に、姉妹は絶望した。
父が否定してくれたらどんなによかったか。隣の鬼畜噂ばあさんの間違いであったら、どんなによかったか。


「いつから知ってたんだ…?」

「きのう。お隣の島田さんが言ってました。」



今にでも父親を張り倒しに行きそうななぎさをつかさは羽交い締めして止めた。

なぎさ、我慢して、今はお母さんに任せよう。



母親は続ける。


「下手したら娘くらいの年齢の女じゃないの。ふしだらね。なんのつもりなの?」

「その…ほんの出来心というか…」

「男の人って出来心で不倫できるんですか。家庭があるのに?」

「…。」




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