カンナの花
「しーらない。島田さん人の噂話大っ好きじゃん。どういう手段持ってるんだか。無駄にいろいろ知ってんのよ。怖いよーあの人。しかもお節介。知らぬが仏なことも世の中たんとあるわよ。」
確かに、知りたくなかったかもしれない。
「お母さん、どうするつもりなんだろ」
「さぁねー。あれでいてかなりのお嬢さま育ちだから、世間知らずな面もあるしねぇ。」
「ね、つーちゃん。」
「ん?」
「あたし、たぶんもう、お父さんの顔見てもお父さんって呼べない。」
なぎさの言うことももっともだった。つかさは同情した。
自分だってこんなこと信じたくないけれど、妹はまだ中学生だ。自分よりもわけがわからなくて混乱しているに違いない。
「これからどうしようね…。」
母に似た目で虚空を見つめる姉の横顔を見て、わたしも母にこんなにも似ているのだろうか、それとも父親似だろうかとなぎさは考えた。
もし父親似ならば、自分の存在すら気持ち悪いと思った。
世間的にはどうなんだろう。よくある話なんだろうか、となぎさは続けて考える。こんなに驚き動揺しているのはバカみたいだろうか。
でも。と思い直す。
よくあるからって理由で、許していいわけじゃない。
翌日の夜は父親が帰ってきた。ここのところ、週の半分は帰り、半分は"仕事場で過ごす"日々が続いていた。