psi 力ある者 愛の行方
夕方。
家族四人で食卓を囲んでいた。
お母さんの料理は美味しくて、それを食べる父の顔は幸せに満ちている。
目の前に座る両親。
陸と並び、その前に座る私たち。
テーブルの下では、その両親に気付かれないよう、二人の指が絡まる。
愛しいと、触れ合う。
「なぁ、未知、陸」
箸を休め、父が私たちに話しかけてきた。
「お父さんたち、今週末二人だけで出かけたいんだが、いいかな?」
子供たちに気を遣うように訊ねながらも、照れくささを滲ませた顔つきをしている。
「いいんじゃない? 別に。籍入れてから二人でどこにも出かけてないんだし」
陸は、早々に食事を食べ終り、空になった食器を前に笑顔を見せる。
「そうか?」
陸が同意すると、明るく嬉しそうに父が声を上げた。
まるで、遊園地へ行く約束でもした子供のようだ。
隣では、お母さんも嬉しそうな微笑みを浮かべている。
「で、どこ行くの?」
「箱根に一泊でもと思っててな」
「箱根? 一泊? しょっぼいなぁ~。ドーンと一週間ぐらい海外とか行っちゃえばいいのに」
からかうように陸がはしゃぐ。
父たちの旅行話に、陸の方が浮かれているみたいだった。
「まぁ、それはおいおい。仕事の都合もあるしな。取り敢えずは、今週末の土日ということで」
からかう陸に恥ずかしそうにしながらも、嬉しさに父は顔を緩ませっぱなしだ。
「良かったね、お母さん。やっと新婚旅行にいけるよ」
私も調子に乗ってからかった。
ふふっと幸せそうに笑うお母さんとは対照的に、父は照れ隠しに私を叱る。
「みっ、未知っ」
だけどその顔は、少しも怒ってなどいなくて、寧ろ幸せな笑顔だった。
父は、二人の子供たちにタジタジになりながら、お母さんの方を見て助けを求めている。
そんなお母さんは、クスクスとおかしそうに笑うだけ。
「週末。二人でお留守番よろしくね」
「うん」
「了解」
笑顔で私と陸は返事をした。
テーブルの下で絡めていた指は、いつしかしっかりと握られ。
二人っきりの時間を自分たちも持つことができるんだ、と心が上気していた。