psi 力ある者 愛の行方 


祖母は、震える私を抱きしめたまま、陸のことを話して聞かせてくれた。

「あの子は、癒しの力を持つ者だった。怪我や、体調不良を和らげる力だよ。ただし、それは強い力ではない。あの子の力は、未知に比べて元々強いものではなかったんだ。だから、癒すのにもそれなりの時間が必要になる。それから、ほんの少しだが相手を感じる力も備えていた。力が弱い分、未知のようにはっきりと言葉や映像になって伝わるわけではないが。感覚的に、相手が今どんな感情を抱いているのかが解り。居場所を察知できる力を持っていた。その弱い力も、直接相手に触れることによっては、より一層はっきりと認識する事もできる」

祖母の話から、今までの出来事が頭に浮かぶ。

誰に聞いたわけでもなく、図書室や屋上にいる私を見つけ出したり。
廊下で具合が悪くなった時も、屋上で倒れた時も、陸が背を撫でてくれたりしているうちに体は楽になっていった。

保健室でだって。
寸でのところで現れ、事情など知るはずも無いのに泉を怒鳴りつけた。
泉に惑わされているんだ、と私を諭した。

「あの子は、自分に力があることを心得ている。不思議に思いながらも、癒す力を使い。流れ込んでくる他人の感情を、受け入れて生きてた。そして、未知に同じ力が備わっている事にも、気づいているはだよ……」

っ――――!

「けれど、陸は、禁忌のことなど知らぬ。ただ、同じ力を持つ未知に安心感を抱き。血の繋がらないと思っている未知へ、愛情を抱いてしまった」

実際は、本当の姉弟だったのにな……。

おばあちゃんの最後のつぶやきは、力ないもの。

「陸にも、痣があるの?」

今まで、一度も痣には気付かなかった。
力ある者の証。

祖母は、コクリと頷く。

「未知と同じように、耳の後ろにあるはずだよ」

耳の後ろ。

その場所は、髪の毛に隠れて見えない。
相当注意をしなければ、そこにあるんだ、と思って見ようとしなければ、気付くはずなどない……。

「お祖母ちゃん……。わたし……私。どうしたらいいの……」

犯してしまった禁忌は、もう取り返しのつかないものなの?
私たちは、どうなってしまうの?

御伽噺の中の恐怖と破滅。

それっていったい……。


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